二十四節気と俳句

 


立春(初春・2月)

 

○「春立つや歩道を渉るビートルズ」(透次

○季語(春立つ)

【作句メモ】:「立春」の日は「ビートルズの日」のひとつでもあります。ビートルズといえば最も有名な画像のひとつが、一列になってメンバーが渡る「アビー・ロード」の横断歩道。さあ、ビートルズさん。春立つ日に歩道から離陸してください。

 



啓蟄(仲春・3月)

 

 

○「啓蟄の土もて埋める土の穴」(透次)

○季語(啓蟄・春)

 

【作句メモ】:土の穴を埋めるための土は、その穴を掘ったときの土です。今日は二十四節気の「啓蟄」。冬ごもりの虫が地中からはい出るころです。



初春・2月・立春

●方法俳句0115・疑問発見01・津根元潮・2013-02-04

○「どこからが春どこからか春立ちぬ」(→津根元潮
○季語(立春)
【鑑賞】:今日、2月4日は二十四節気の「立春」。まだ暦だけの春ですが、その足音は身の回りのどこかに聞こえてきそうです。今回の作句方法は「疑問の発見」。いつしか春になるのですが、いったい春のはじまりはいつのことなのでしょうか。


仲春・3月・啓蟄

●色彩俳句0164・さくら色01・中村和弘01・2014-03-05(水)

さくら色#FEEEED(ソメイヨシノなど、日本産桜の花弁の淡紅色)

○「啓蟄の蹄削ればさくらいろ」(→中村和弘
○季語(啓蟄・春)

【鑑賞】:「さくら色」は初登場です。馬はひづめが伸びすぎると正しい姿勢が取れず、定期的に削る必要があるということです。削ったあとに馬の生身の色「さくら色」があらわれました。


仲春・3月・春分

●次元俳句0218・二十四節気=春分(時間)02・2015-03-21(土)

○「たつぷりと春分の日を歩きけり」(→増成栗人
○季語(春分の日)

【鑑賞】:「たっぷりと」がいいですね。ゆっくりと時間をかけて、さらには春の陽光を存分に浴びて歩きました。「春分の日」。今日から徐々に徐々に日が長くなっていきます。


晩春・4月・清明

●次元俳句0221・二十四節気=清明(時間)03・2015-04-05(日)

○「清明や雲の生まるる音のして」(『星槎』2006)(→明隅礼子
○季語(清明・春)

【鑑賞】:雲の生まれる音はさしずめ「ポン」や「ポコ」あたりでしょうか。そんな音が聞こえるほど春はたけなわです。清明:万物がすがすがしく明るく美しいころ。二十四節気の第5。次の穀雨前日まで。


晩春・4月・穀雨

●次元俳句0171・収斂01・2014-04-20(日)

○「畦の木に風のあつまる穀雨かな」(→黛執

○季語(穀雨・春)

【鑑賞】:今日は「穀雨」。あたたかい雨が降り、五穀が成長する時期です。樹木に風があつまるというより、むしろ樹木が風をあつめているのでしょう。田の稲のために。


初夏・5月・立夏

●五感俳句0173・聴覚051・中村苑子07・2014-05-05(月)

○「胎内の水音聴いてゐる立夏」『四季物語』(1979)(→中村苑子

○季語(立夏)

【鑑賞】:今日は立夏。今日から立秋の前日までが暦の上での夏。身体の中できゅるきゅると水の流れる音が聴こえます。耳に聞こえるというよりは、体の中に響くというような感じでしょうか。


仲夏・6月・夏至

●五感俳句0232・嗅覚0453・百合山羽公03・2015-06-22(月)

○「夕刊に夏至の匂ひのありにけり」(→百合山羽公

○季語(夏至)

【鑑賞】:今日は「夏至」。昼の最も長い日。新聞受けに夕刊が来ても夕闇はまだだいぶ先のことです。


晩夏・7月・大暑

●色彩俳句0236・漆黒02・林翔03・2015-07-22(水)

○「漆黒のピアノ据ゑたる大暑かも」(→林翔

○季語(大暑・夏) 「しっこくのぴあのすゑたるたいしょかも」

【鑑賞】:漆光りの黒・「漆黒しっこく#0d0015」。まさに何でも映し込む、あのグランドピアノの色です。明日は二十四節気の「大暑」であります。→「和色大辞典


初秋・8月・立秋

●方法俳句0186・比喩(直喩)=かたちに02・出口善子01・2014-08-07(木)

○「秋立つや風のかたちに猫ねむり」「花曜」(→出口善子
○季語(立秋)
【鑑賞】:前回の「この国のかたちに曲がる唐辛子」(伊藤白潮)は唐辛子を日本列島にみたてました。今回は眠る猫のしなやかな肢体を風にみたてています。秋風などはまだ暦の上でのことです。


初秋・8月・処暑

●次元俳句0241・二十四節気04=処暑(時間)・柿沼茂01・2015-08-23(日)
○「水平にながれて海へ処暑の雲」(→柿沼茂
○季語(処暑・秋) 「すいへいにながれてうみへしょしょのくも」(「俳句歳時記第四版増補」より引用)
【鑑賞】:海に流れ出るのは河川だけではありません。雲も陸地から海へ水平に流れていきます。どこかしら涼しげな処暑の雲です。


仲秋・9月・白露

●次元俳句0243・二十四節気05=白露(時間)・井上信子01・2015-09-08(火)
○「寄せ墓に白露の日差しありにけり」(「鴫」)(→井上信子
○季語(白露・秋) 「よせはかにはくろのひざしありにけり」(「俳句201309」より引用)
【鑑賞】:今日は二十四節気の「白露」。「寄せ墓」とは墓地の埋骨を一ヶ所にまとめ石碑を立てた墓。どことなく秋の気配の日差が墓石に影を作ります。


初冬・11月・立冬

●五感俳句0199・嗅覚036・笹瀬節子01・2014-11-07(金)
○「立冬や山の匂ひの父母の墓」(「俳句界」201311)(→笹瀬節子
○季語(立冬)「りっとうややまのにおひのふぼのはか」
【鑑賞】:北国の 父母の墓は 冬になると車では登れない 山の上にあります 立冬を迎える頃 雪や山の匂いに 包まれます


初冬・11月・小雪

●五感俳句0201・質感=重011・藤本美和子01・2014-11-22(土)
○「小雪や百匁とはこのくらゐ」(「俳句」201208)(→藤本美和子
○季語(小雪・冬)「しょうせつやひゃくもんめとはこのくらゐ」
【鑑賞】:実際に「匁(もんめ)」という目方の単位を用いた句。何の重さ百匁と言っているのかは不明です。現在の単位で374.62gですから、夕食の牛肉の目方あたりでしょうか。今日は小雪。


仲冬・12月・冬至

●特集俳句0206・数詞の二05・須佐薫子01・2014-12-22(月)

○「冬至風呂二階に人はゐないはず」(「帆船」200301)(→須佐薫子
○季語(冬至風呂) 「とうじぶろにかいにひとはゐないはず」(「歳時記」http://www.haisi.com/saijiki/toujiyu.htmより引用)
【鑑賞】:作者は一階のお風呂に入っているのでしょうか。冬至風呂でくつろいでいると、なにやら二階から物音がします。はて、誰もいないはずですが…。


晩冬・1月・小寒

●次元俳句0208・二十四節気=小寒(時間)01・安立公彦01・2015-01-06(火)
○「小寒や早や点しある宵の路地」(「春燈」201203)(→安立公彦
○季語(小寒・冬) 「しょうかんやはやともしあるよいのろじ」
【鑑賞】:早い夕暮の路地にもう電燈が点りました。今日は二十四節気の小寒。最も寒さの厳しい時期、寒の入りです。遅くなりすぎた年賀状が寒中見舞いとなるあたりです。


晩冬・1月・大寒

●五体俳句0158・肋骨01・仙田洋子01・2014-01-20(月)
○「大寒や楽器のごときあばら骨」(→仙田洋子
○季語(大寒・冬)
【鑑賞】:今日は「大寒」。1年で最も寒い日。「あばら骨」を楽器に喩えるとしたら、弦楽器ということになるでしょう。さしづめ、「琴」か「ハーブ」でしょうか。弦間をひょうひょうと寒い風が抜けていきそうです。